
産婦人科ってどんなところ?どんなときに受診するの?専門医がわかりやすく解説します
皆さんは産婦人科に、どんなイメージをお持ちでしょうか。妊娠や出産をする人だけが行くところ、恥ずかしい検査があるところ…?そんなイメージのせいで、不安や抵抗感を抱える人が多く、SNS上でも炎上が絶えない産婦人科。
crumii編集部は声を大にして言いたい、産婦人科は怖いところではありません!というのも、産婦人科は妊娠・出産だけでなく、生理不順や生理痛などの月経にまつわるお悩み、女性特有の病気の検査や予防、さらには更年期の相談まで、女性の一生を通じて幅広くサポートしてくれる診療科なのです。
crumiiではそれを少しでも多くの女性に伝えたい。たとえ小さな不安や疑問でも、医療の介入で解決できることがあります。
この記事では、crumii編集長でもある宋 美玄先生が経営する、「丸の内の森レディースクリニック」さんの協力のもと、実際の診療の写真も交えてお伝えします!
産婦人科ってこんなところ
産婦人科の役割:産科と婦人科の違い
産婦人科とは、「産科」と「婦人科」の2つの領域をあわせた診療科です。名前のせいで勘違いされやすいですが、婦人科のみを扱っているクリニックも多くあります。
産科
妊娠や出産、産後の管理を主に担当します。妊娠中の健診や赤ちゃんの発育状態の確認、出産にまつわるケアなど、母子の健康を守る大切な役割を担っています。また、生まれる前の赤ちゃんの病気を調べるための出生前検査(出生前診断)、分娩を行っている病院もこちらに含まれます。
婦人科
子宮や卵巣などの女性にしかない臓器に関わる病気の診断と治療、不妊治療、性にまつわる相談などを含みます。たとえば生理不順や月経痛、子宮頸がんや子宮筋腫の検査・治療が主な業務です。
PMS(月経前症候群)、更年期など、女性ホルモンに関係する病気も扱います。また、デリケートゾーンのかゆみや、性感染症、外陰部のトラブルなども婦人科の領域のひとつです。
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診療所の名称は、開業時に決める店名のようなもので、クリニックによってそれぞれ異なります。国が定めたルールに沿った許可がおりていない診療科は名乗れません。
ただし、医師の専門性や設備によって対応できる診療の内容はケースバイケースなので、ホームページで確認し、自分の悩みやトラブルに対応できるクリニックかどうか調べてからの予約がおすすめです。
ホームページでは、名前よりも「診療案内」「診療科」というページに記載があることが多いので、受診前にチェックを。
なお、妊婦さんと同じ場所に通うのに抵抗があるという方は、「婦人科」のみ扱っているクリニックを選ぶと良いでしょう。
ケース1:産科、婦人科を併設しているが、分娩は扱っていないクリニック。
ケース2:ケース1に加えて、分娩を扱うクリニックや医院。
ケース3:産科診療は行わず、月経や性感染症など、婦人科領域の診療のみを扱っているクリニック。
ケース4:不妊治療に特化したクリニック。
ケース5:乳腺外科、婦人科を併設したクリニック。おっぱいも含めて女性の診療全般を扱っている。
どんなときに産婦人科へ行くの?
こんなときは産婦人科を受診しましょう、という事例を並べてみました。理由は人によって様々ですが、産婦人科に多く寄せられるのは以下のような症状や相談です。
生理不順
月経周期(※3)が乱れたり、生理が数か月こないなどの症状があるとき。
月経痛がある、量が多い
これって普通?と自己判断せずに、「生理が嫌だな」と少しでも感じたらぜひ受診を。日常生活に支障をきたしたり、市販の痛み止めでは対応できないほどの強い痛みがある場合、子宮内膜症などの病気が隠れている可能性もあります。
妊娠を疑うとき、または妊娠に関する相談
妊娠検査薬で陽性が出た場合はもちろん、妊活にまつわる相談も。
おりもののにおいや量がいつもと違う、デリケートゾーンにかゆみがある
おりもの(膣分泌物)の変化には細菌やカンジダといった感染症が隠れていることも。デリケートゾーンのかゆみもよくある相談のひとつ。
更年期症状や閉経前後の悩み
ほてりやのぼせ、気分の落ち込みなど、更年期障害が疑われる場合。
自治体から検診の通知がきた
自治体によっては、子宮頸がん検診などのクーポンが発行されることも。無料あるいは少額で、かかりつけを見つけるチャンス。
予防接種
HPVワクチンや、インフルエンザの接種も。
健康診断で精密検査になった
会社の健康診断で指摘を受けた場合にも、早めの受診を。
生理をずらしたい
大切なイベントや試合、受験やプレゼン、結婚式や旅行など、生理に被ってほしくない日がある時は、相談することでずらすことができる場合があります。
診察室で何を聞かれるの?問診のポイント
産婦人科を受診すると、まずは「問診」が行われます。現在は、Webなどで予約時に済ませることも多いです。問診は、医師が症状や体調の変化を把握するための大切なステップ。プライバシーに関わることなので話しづらいこともあるかと思いますが、悩みの解決策を提案するために必要な情報だと考えていただけると嬉しいです。
主に以下のような質問がされることが多いです。
最終月経日
もっとも最近の生理の始まった日。妊娠の可能性やホルモンバランスを判断するうえで重要な指標となります。
月経周期
生理(出血)が始まった日から、次の生理が始まる前日までの日数のこと。一般的には25日〜38日が正常範囲とされています。
性交経験
かなりプライバシーに踏み込んだ質問でびっくりされるかもしれませんが、性交経験の有無で診察の方法が変わります。性交渉の経験がない女性には、エコーの際に配慮してくれるクリニックもあります。
また、性交経験がなければ、症状の診断をする際に、異所性妊娠(子宮外妊娠)や流産といった、妊娠を要因とした症状の可能性が否定できるので、その可能性を排除する意味も含めて質問されています。安心して回答してください。
月経痛の程度や出血量
痛みの強さを具体的に伝えられると診断の助けになります。また、生理用品をどれくらいの頻度で替えているか(出血量の目安)も重要な情報です。
普段から気になる症状の有無
例えば、おりものの状態、性交時の痛み、不正出血(生理以外の出血)など。
妊娠の可能性
最終月経日やエコーの所見、性行為のタイミングなどから、医師が妊娠の可能性を探ります。
生活習慣や既往歴(過去にかかった病気)
持病がある場合や、内服しているお薬の有無も確認されることが多いです。
内診・検査の内容を理解しよう

産婦人科で行われる代表的な検査に、「内診」があります。
内診は、デリケートゾーンを医師が診察するため、抵抗を感じる人の多い検査ですが、内診や超音波検査によってわかることがたくさんあるので、必要時に行われています。検査時に不安がある場合は、ぜひ医師やスタッフに伝えてください。
crumiiに賛同してくれる医師は、検査を強要することはしないはずです。
婦人科診察では、医師が内診し、出血の状態をみたり、超音波検査(エコー検査)で子宮や卵巣の状態を確認したりして、異常がないかを調べます。
内診の流れ
まず、ショーツを含め、ズボンは脱ぎます。スカートやタイツでない靴下は履いていてもOKですが、オールインワン(つなぎ)の場合は全部脱ぐ必要があります。
続いて、専用の診察台に座り、膣の入口を診察用の器具(クスコという)で開いて、膣や子宮頸部を観察します。必要に応じて柔らかいブラシや、綿棒のようなもので細胞を採取し、病理検査や細菌性感染症の検査を行うことがあります。
外陰部のトラブルなどで診察を受ける場合は、どの辺りにかゆみやおできができているのか、場所を伝えるとスムーズに診察ができます。
苦痛がある場合は伝えましょう
内診に対して恐怖心や痛みを感じる方もいらっしゃいます。もし痛みが強い場合や、過去の経験でトラウマや不安がある場合は、遠慮せずに医師や看護師に伝えてください。
内診以外にも、ホルモンバランスや貧血の有無を調べるために採血をすることもあります。
エコーはお腹の上からも見ることができるので、性交経験のない方や痛みが伴う方は、腹部超音波を使って検査することも可能です。(通常、膀胱など多くの臓器に隣接しているため、経膣エコーの方がきれいにみえ、情報量は多くなります)子宮はお腹の下の方にあるため、少し下着をずり下げてもらう必要がありますが、パンツを脱ぐ必要はありません。
おわりに
産婦人科は「妊娠したときだけ行く場所」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、実際にはかかりつけを作っておくことで、体のトラブルを相談できるだけでなく、女性の体に関するチョイスを知り、生涯にわたって役立つ医療が受けられる場所です。
気になる症状や不安があれば、一人で悩まずにぜひ産婦人科を受診してください。あなたの体を守るために、産婦人科の医師・看護師・スタッフはいつでも寄り添い、サポートしてくれます。
女性が自分の体を知り、コントロールできるかどうかは、日々の生活の質を大きく左右します。日常生活に笑顔で過ごせる時間を増やすためにも、産婦人科を身近に感じていただけたら嬉しいです。