
こわがらないで更年期 #01
更年期は突然に!? 41歳で少し早めの閉経を迎えた医療ライターが「更年期は怖がらなくていい」と力説する理由
「更年期」と聞いて、あなたはどんな印象を抱きますか? とにかく怖い、体調不良が不安など、良くないイメージを持つ人が多いのでは。たしかに、更年期には心身ともに不安定になりがちですが、だからといって必要以上にこわがる必要もありません。一足先に更年期を迎えたライターが、実体験と科学的事実を交えて、更年期のことをお伝えします。
少し早めの閉経を迎えた医療ライター
あれは、私がまだいたいけな中学生だったある日のこと。何気なく見ていたテレビ番組に突然、とある女優さんの顔 が大写しになりました。画面の中の彼女は目を見開き、まるで怪談話でもするかのように、自身に襲いかかった「更年期」とやらの症状が、いかにつらかったのかを話し始めました。それを見て、私は「いずれくるであろう更年期とは、こんなにも大変なのか」と恐怖におののいたのでした――――。
……と、唐突にタイトルとは真逆のエピソードから始めて、ごめんなさい。はじめまして、医療ライターの山本尚恵といいます。普段は女性医療をはじめとした医療記事を中心に、さまざまな媒体で執筆しています。
私は、40歳を少し過ぎた頃に更年期の症状を感じました。症状を実感したのとほぼ同じ時期に生理(月経)も来なくなり、閉経を迎えました。現在(2025年4月時点)46歳ですが、月経はもうありません。日本人女性は平均50歳で閉経を迎えるといわれているので、人よりちょっと早めです。
更年期に対しては、冒頭でもご紹介したように、女性の多くが「怖い」「不安」「つらそう」といったイメージをお持ちのように感じています。実際に経験した身としては、たしかにつらい面はあるものの、いたずらに怖がるものでもないという印象です。しかも閉経後は、ホルモンの波に心身が左右されることがなくなるため、メンタルは安定していて、体もむしろ前より元気です(あくまで私の場合です。更年期の症状は個人差が大きく、大変な思いをする場合があることは理解しています)。
そんな、少し早めに更年期を迎えた私が、自身の体験を踏まえつつ、更年期についてお伝えしようというのが、この記事の趣旨です。読んでいただいた後、皆さんが抱いているであろう更年期に対する不安が、少しでも軽くなれば幸いです。
更年期は誰にも訪れる
ではあらためて、更年期についてご説明しましょう。更年期とは、主に女性が迎えるライフステージの一つ。思春期や老年期などと同じくくりです。期間は、閉経を挟んだ前後5年間、計10年間程度。先ほどもお伝えしたように、日本人女性の閉経は平均50歳であることから、45~55歳くらいが更年期にあたる人が多いといえます 。もちろん個人差があり、私のように40歳で更年期を迎える人もいれば、55歳になっても始まらない人もいます。しかし、時期は多少違っても、更年期は誰にも公平に訪れます。
そんな、誰にもやってくる更年期がちょっとやっかいな存在と思われているのは、心身に不調があらわれやすい時期だからといえます。更年期には、ホルモンバランスの乱れや卵巣機能の衰えから、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が急激に低下します。すると脳は、卵巣に対して「もっとエストロゲンを出してよ」と催促をするホルモンを出します。しかし、それでも卵巣はエストロゲンを分泌することができません。その結果、ホルモンのバランスが崩れて、不調があらわれるのです。閉経前後に出やすい不調には、以下のようなものがあるといわれています。
閉経前後に感じる主な不調
・のぼせ、ほてり、多汗
・頭痛、腹痛
・肩や首のこり、背中や腰の痛み
・手指のこわばり、痛み
・めまい、立ちくらみ、ふらつき
・肌の乾燥、かゆみ
・不眠、寝付きの悪さ
・デリケートゾーンの乾燥、かゆみ
・イラつき、落ち込み、抑うつ感
・倦怠感、疲れやすい など

とはいえ、すべての人に不調があらわれるわけではありません。また、不調の程度も人それぞれです。日常生活に影響がない程度の人もいれば、大きく支障を来す人もいます。後者のように、更年期に起こる心身の不調によって、日常生活を送りづらくなるケースは、「更年期障害」と呼ばれます。不調がいつ、どの程度の強さで、どれくらいの期間あらわれてくるのかは、今の科学ではわかっていません。そうした、見えない部分が大きいところが、更年期を不安に感じる人が多い一因でもあるのでしょう。
更年期の不調:私の場合
さて、ここからは私の話をします。私が、「おや、これはもしかして……更年期?」と感じたのは、「汗をかきやすくなったこと」がきっかけでした。5月中旬のある日、私はベランダで洗濯物を干していました。立夏を過ぎ、多少気温が高くなったとはいえ、5月はまだ心地良く過ごせる時期のはずです。それなのに、少し動いただけで顔に汗が吹き出してきます。洗濯物を干し終えた後は、エアコンをガンガンに効かせて涼んでからでないと、汗のせいでメイクもできない状態です。「今年はめちゃくちゃ暑いな……」そう思いつつ、夫や息子を見ると、彼らはまったく汗などかいておらず、涼しい顔をしています。
「これはおかしいぞ」
思い返せば、顔から汗が吹き出るのは、その日に限ったことではありません。外出時には、ハンカチ代わりに持ち歩いているミニタオルが、いつもびしょびしょになるくらい、汗をぬぐっていました。汗がひかないため、体温を下げようと、ワキの下に保冷剤を挟んでメイクをしたことも、一度や二度ではありません。加えて、ちょっとしたことで、しじゅうイライラし、家族に当たり散らすこともありました。そういえば、ここ数回、月経周期も乱れています。
「ひょっとして、これ、更年期じゃね?」
そこでようやく私は、自分に典型的な更年期の症状があらわれていたことに気が付いたのです。
血液検査でちょっと早めの閉経がわかった
幸い、「更年期かも」と気付いた数日先に、私はたまたまレディースドックを予約していました。健診を受けてから約1週間後、検査結果を医師とともに確認しました。そこに記されていたエストロゲン(正確にはエストラジオール:E2)の値は「7pg/ml」。エストロゲンの基準値には幅がありますが、比較的少ない卵胞期でも28.8pg/mlが最小値 です。7pg/mlは相当少ない値といえます。
結果を見た医師からも、「閉経が近づいていると考えて問題ないでしょう」との言及があったことから、私は、昨今自分が直面していた数々の症状が更年期によるものであることを理解しました。
ちなみにその時、私は41歳。閉経が早いと、長期間のエストロゲン不足により、骨粗鬆症や性器萎縮(膣が乾燥したり萎縮したりする)、冠動脈疾患や脳卒中などのリスクが上がります。そこで、それらのリスク低減のため、私はHRT(ホルモン補充療法)を始めることにしましたが、そのお話は次回に続きます。
【参考文献】
『【読む常備薬】図解ただしく知っておきたい子宮と女性ホルモン』宋美玄/著(河出書房新社)
山本 尚恵
医療ライター。東京都出身。PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社を経て、2009年8月より独立。各種Webメディアや雑誌、書籍にて記事を執筆するうち、医療分野に興味を持ち、医療と医療情報の発信リテラシーを学び、医療ライターに。得意分野はウイメンズヘルス全般と漢方薬。趣味は野球観戦。好きな山田は山田哲人、好きな燕はつば九郎なヤクルトスワローズファン。左投げ左打ち。阿波踊りが特技。