
妊娠中のDo & don't #01
妊娠中に「コーヒー」「紅茶」「お酒」「タバコ」などの嗜好品はNG?
妊娠中には、妊婦さん本人だけでなく、おなかの赤ちゃんのために嗜好品をやめる必要があります。何をどの程度なら大丈夫なのか、医学的根拠に基づいてご説明します。
なんでもかんでもダメなわけではない
妊娠前からコーヒーや紅茶、お酒などの嗜好品を楽しんでいた場合、急にやめなくてはならないとなると大変ですよね。でも、なんでもかんでもダメなわけではありませんから安心してください。一つずつ、確認していきましょう。
1.カフェイン
「妊娠中のカフェイン摂取はNG」と思っている人も多いはず。確かにコーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインを大量に摂取すると、流産のリスクが高まるだけでなく、2500g未満で生まれる「低出生体重児」のリスクもあることがわかっています。
例えば、カフェインの1日摂取量が100mgまでに比べ、500mg以上だと流産率が2.2倍になるという研究結果もあるほど(※1)。ですから、英国食品基準庁(FSA)は、妊娠中の女性はコーヒーをカップ2杯まで(カフェイン量200mg程度)に制限するよう求めています(※2)。そのくらいを目安にしましょう。
カフェイン量の目安(カップ1杯)
コーヒー
約100mg
紅茶
約30〜50mg
緑茶
約30〜50mg
ここで大事なのは1日トータルの摂取量で考えること。コーヒーを1杯しか飲んでいなくても、その後に緑茶や紅茶、コーラ、ココアなどをたくさん飲めば、すぐにカフェイン量200mgをオーバーしてしまいます。また、カフェインは、栄養ドリンクにも大量に含まれていることがあるので注意しましょう。
一方、カフェインが含まれていない麦茶やコーン茶、ルイボスティー、デカフェなども美味しいですから、いろいろと試してみてください。特に好みでないのなら、よく妊婦さんにいいとおすすめされる「たんぽぽ茶」などのハーブティーを飲む必要はありません。
2.アルコール
妊娠中に飲酒すると、赤ちゃんが発育不全になったり、顔を中心とする形態異常、脳障害などになるリスクがあり、これを「胎児性アルコール・スペクトラム障害」といいます。特に器官形成期(妊娠2カ月5週〜3カ月11週)はリスクが高いため、妊娠を考え始めたときから基本的には禁酒してください。
3.タバコ

妊娠中でなくてもですが、タバコは「百害あって一利なし」。妊娠中に喫煙すると、妊婦さん本人が、血圧が高くなる「妊娠高血圧症候群」、胎盤が急に剥がれる「常位胎盤早期剥離」といった命に関わる合併症になるリスクがあります。さらに赤ちゃんには、早産、低出生体重、胎児発育遅延などのリスクがあるのです。
また妊婦さん本人は喫煙しなくても、周囲の人の煙を吸う「受動喫煙」をすると、「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の要因になることがほぼ確実なうえ、低出生体重、胎児発育遅延との関連も指摘されています。
ですから、妊娠前に、妊婦さん本人だけでなく、ご家族も禁煙しましょう。妊娠前であれば、少量のニコチンを血中に入れることで無理なく禁煙できる「禁煙補助薬」などを使うことも可能です。妊娠してからは禁煙補助薬は使えませんから、ミント系のガムを噛むなどして、我慢しましょう。いきなり0にするのが無理なら、少なくとも本数を減らしていきましょう。
なお、最近は紙巻きタバコではなく、いわゆる新型タバコ(非燃焼・加熱式タバコ、電子タバコ)を吸う人もいますが、たとえニコチンが含まれていなくても、タールや一酸化炭素、ホルムアルデヒドなどの有害物質が含まれている場合もあり、また健康への影響が確認されていないので吸わないようにしてください。
以上のように、カフェインは1日200mgまで、アルコールやタバコはやめるようにしてくださいね。
※1 N Engl Med.2000 Dec 21 ; 343(25):1839-45
※2
http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20120206100416/http://food.gov.uk/news/newsarc
hive/2008/nov/caffeinenov08
大西まお
編集者、ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、宋美玄著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、森戸やすみ著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。