ケアマネージャー 介護士 女性

crumii編集長・宋美玄の炎上ウォッチ #04

炎上中の「子育てケアマネ」について詳しく聞いてみるとだいぶ印象が違った件

そもそも「子育てケアマネ」とは? 解像度を上げるため、識者に話を聞いてみた

 

子育て団体が提言している「子育てケアマネ」制度案がSNS上で炎上しました。発端は、元衆議院議員の菅野志桜里さんの「3年以内に子育てケアマネを全家庭に実現する」という投稿でした。これに対し、「ケアマネを必要だと感じたことはない」「それよりも現役世代の所得を増やして」と不要論、無駄なことにお金を使うなという反応が多く見られました。

 

私自身も「足りないのはケアマネでなくケアラー。マネジメント不足ではなく人手不足」と投稿しましたが、そもそも「子育てケアマネ」とは何の役割なのか詳しくわかっていませんでした。

 

その解像度を上げるため、「子育てケアマネ」と「保育」の保障をすべての親子に求めている団体の一つ、みらい子育て全国ネットワーク(miraco)の天野タエさんにお話をうかがいました。天野さんは、年少扶養控除の復活や高校生扶養控除の廃止阻止にも尽力されている、現場に根ざした支援者の方です。

 

「ケアマネ」は単なる相談先ではなく。妊娠中からの”伴走型支援”

 

天野さんによると、「ケアマネ」の真意は単なる相談先ではなく、妊娠中からの“伴走型支援”とのことです。たとえば、東京都が2023年から25歳以下の妊婦さんに対して行っている「アーリーパートナーシップ」はその代表的な例で、専門的な研修を受けたソーシャルワーカーや臨床心理士、保健師などのチームが、妊娠届を出した時点から産後1年まで家庭訪問を行い、生活上のさまざまな困りごとに対応しています。経済的な支援も、単に制度を紹介するだけでなく、本人の家計に寄り添って具体的に支援するスタイルで、支援を受けた方の「ゆとり感」が上昇しているというデータもあると報道されています。

 

介護保険制度では、本人や家族へのアセスメントをもとにケアマネが当事者に合ったサービスプランを作成し、施設入所も在宅サービスも市町村の責任のもと一元化されています。一方で、子どもや子育てにはそのような仕組みがなく、たとえば児童虐待で都道府県に一時保護された時点で、市町村や支援チームの責任が終わってしまい、その谷間に落ちた子どもが命を落とすという事例が起きてしまっています。

 

厚労省の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)」によると、0歳児の死亡の4分の3が生後3か月までに集中しているそうです。だからこそ、妊娠中からの支援が必要で、誰も取りこぼさない仕組みが求められているのだと感じました。

 

私は介護の経験がないので、これほどまでにケアマネの支援が手厚いとは知りませんでしたが、介護経験のある天野さんが「ケアマネがいたから生き延びられた」とお話されていたのがとても印象に残りました。

 

まさに私が必要だと思っていた「乳児の虐待を減らすための取り組み」と同じことだった

 

私自身、産前産後に経済的・社会的にハイリスクな家庭や、頼れる人がいない状況、あるいは赤ちゃんが早産児や先天性疾患などで育児に大きな負担がかかるご家庭において、退院後すぐに虐待死や母親の自死、離婚といった事例を見てきました。だからこそ、このような制度の必要性を強く感じていました。以前から日本に取り入れようとされているフィンランドの「ネウボラ」とも似た仕組みですが、しっかりと研修を受け、価値観の押し付けやパターナルな態度がない支援チームであれば、とてもいい制度だと思います。

 

ベビーシッター 女性 赤子
photo:PIXTA

 

私は長らくいっぱいいっぱいで育児をしてきていますが、「ケアマネ」という言葉にピンとこなかったので、そこにリソースが投入されると聞いて、つい「他に優先すべきことがあるでしょ」と反発してしまいました。でも、よく聞いてみると、それはまさに私が必要だと思っていた「乳児の虐待を減らすための取り組み」と同じことだったのです。(もちろん現役世代の手取りを増やすことも多くの方に同時に取り組んでいただいてます)

 

この制度が実現することで、子育て相談を担う人たちに時々見られる価値観の押し付けや上から目線の態度、母乳育児をはじめとした非科学的なアドバイスがなくなるといいなと思います。

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