妊娠検査薬

「もしかして、私…妊娠しているかも?」 妊娠検査薬の仕組み、正しく使うための適切なタイミングと方法、注意点を産婦人科医が徹底解説

妊活中で今月の結果がどうしても早く知りたいとき。
いつもより生理が遅れていて、心配な気持ちが募るとき。
あるいは、避妊に失敗した心当たりがあって、不安で胸がいっぱいになるとき。
 
「もしかして、私…妊娠しているかもしれない」──そんな思いが頭をよぎると、私たちの心にはさまざまな感情がいっせいに押し寄せます。期待、戸惑い、喜び、不安…。
 
女性にとって「自分が今、妊娠しているかどうか」は、からだと人生を大きく左右する重大な分岐点です。
一方で、産婦人科に足を運ぶ前に、少しでも早く確かめたい、他人の目を気にせずに知りたい、そんなときに頼りになるのが妊娠検査薬。市販されている妊娠検査薬を使うことで、ご自宅やプライベートな空間で手軽に妊娠の可能性を探ることができます。
 
本記事では、妊娠検査薬の詳しい仕組みや、正しく使うための適切なタイミングと方法、使用するときに気をつけたい注意点を、科学的根拠に基づいてやさしく解説します。
 
まだ病院に行くほどでもないけれど不安を抱えている方、あるいは妊活中で「早く結果を知りたい」という方にとって、お役に立てる内容をお届けします。

妊娠検査薬とは?

妊娠検査薬は、妊娠した時に女性の体内で分泌される「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンを検出することで、妊娠の可能性を判定するための薬剤です。
 


尿をかけたり、浸したりして使用し、数分程度で判定結果が示されるため、早期に妊娠の兆候を確認したい方にとってはとても便利です。

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは、受精卵が子宮内膜(※1)に着床した後、胎盤のもとになる絨毛(※2)などから分泌されるホルモンのことです。妊娠が成立すると、hCGは血液や尿中に一定量以上増加し始め、妊娠検査薬ではこのホルモンを検出して陽性・陰性の判定を行います。

 

妊娠検査薬
photo:PIXTA

 

妊娠検査薬でわかること

妊娠検査薬でわかることは、「体からhCGがでているかどうか」ということだけです。
言い換えると、妊娠に関する他の多くの情報は得られません。あくまで、妊娠している(していた)可能性を示唆するものであって、経過が順調であることを知れるものではないことを念頭において検査しましょう。

 

わかること

・体からhCGがでているかどうか


 

わからないこと


・赤ちゃんが子宮の中にいるか(異所性妊娠でないか?)


・今、赤ちゃんが育っているかどうか


・流産していないか


・どのくらいのタイミングで受精しているか

 

1970年代までは、妊娠検査は産婦人科に行って尿検査、血液検査によって診断を受けるものでした。1980年代になって簡易な尿検査で妊娠判定ができる技術が確立してきたことで海外で検査薬の市販がスタートし、日本では、1992年にロート製薬が初めて一般用妊娠検査薬「チェッカーST」を発売しました。

その後、複数の製薬会社から尿検査で簡単にできる検査薬が市販され始め、現在では、病院に行かなくても、自分である程度確認してから医療機関にかかることができます。

市販の妊娠検査薬は一般用医薬品としてドラッグストアや薬局、オンラインでも手軽に入手できるため、多くの女性が "もしかして妊娠かも?”と思ったタイミングで使用しています。
 

 

※1 子宮内膜とは? 
 子宮の内側にある粘膜で、受精卵が着床し、胎児を育てるためのベッドのような役割を持つ部分のこと
 
※2 絨毛(じゅうもう)とは?  
受精卵が着床した後に形成される胎盤の一部となる細胞組織。ここからhCGが分泌され、妊娠を維持するために重要な役割を果たす

 

妊娠反応を検出するしくみ

妊娠検査薬が検出するhCGは、受精卵が子宮内膜に着床すると、その周辺の細胞から分泌が始まります。一般的には、着床がおこるのは排卵から約6~10日後といわれています。

排卵(※3)とは、卵巣から卵子が放出されることを指し、このタイミングがずれると妊娠検査薬の使用時期や判定結果にも影響が出る場合があります。  
 

着床が成立するとhCGが急速に増加し、血液だけでなく尿中でも検出されるようになります。妊娠検査薬は、このhCGと特異的に結合する抗体(※4)を利用し、視覚的に判定ラインを示す仕組みです。判定窓に線が現れたり、色の変化が起こったりして「陽性」「陰性」が表示されます。

 

※3 排卵(はいらん)とは?  
卵巣から成熟した卵子が放出されること。通常は生理周期(約28日前後)の中間頃に起こるとされていますが、個人差や体調によっても前後する

 

※4 抗体(こうたい)とは?  
体内に侵入した異物などを認識し、結合する性質をもつタンパク質のこと。妊娠検査薬では、hCGを検出するための専用の抗体が使われている  
 

なお、短期間でhCGが急上昇する妊娠初期は、体の変化やつわりなどで敏感になりやすい時期でもあります。もし妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、早めに産婦人科を受診し、医師の判断を仰ぐことで確かな妊娠確認や適切なケアを受けられます。

 

検査精度について

妊娠検査薬の多くは、メーカーや商品ごとに多少の差はあるものの、「生理予定日の約1週間後」以降に使用した場合、99%近い精度で結果が判定できるとされています。これは、尿中のhCG濃度が十分に高まり、検査薬が定める検出感度(けんしゅつかんど)(※5)を超えるためです。
 


※5 検出感度とは?  
妊娠検査薬がhCGを感知できる最小の濃度のこと。一般的には25mIU/mL前後が多いとされていますが、メーカーによって差があります。

一方で、使用するタイミングが早すぎると「偽陰性(本当は妊娠しているのに陰性が出る)」になる可能性があります。

排卵日が遅れていたり、生理周期がもともと不規則だったりすると、予定日通りに検査しても実際にはhCGが十分に分泌されていないことがあるからです。  
 

また、尿が薄い状態(たとえば、検査前に大量に水分を摂取した場合など)だと、hCG濃度が低下して正しく検出できないことも考えられます。  
 

反対に「偽陽性(実際は妊娠していないのに陽性が出る)」というケースはまれですが、hCG注射による不妊治療中の方や、まれな病態(胞状奇胎(ほうじょうきたい)など)がある場合に生じることがあります。こうした特別な状況に心当たりがある方は、必ず医師に相談したうえで検査タイミングや判定方法を確認しましょう。  
 

もし「陽性かもしれない」「陰性だったが生理がこない」などの状況がある場合は、自己判断をせず、産婦人科など医療機関を受診して確認することが大切です。  
 

陽性反応があった場合は、経膣超音波検査で子宮内に胎嚢(赤ちゃんの袋)があるかどうかを確認します。

 

妊娠検査薬はいつから検査できる?

一般的に、多くの妊娠検査薬は「生理予定日の1週間後」からの使用が推奨されています。これは、先述のとおり尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)濃度が十分に高まり、検査薬の検出感度を上回るまでに必要な時間を考慮しているためです。  
 

ただし、排卵日(※1)や生理周期(※2)には個人差があり、厳密に「生理予定日」がわかりにくい方もいらっしゃいます。たとえば、生理不順(※3)がある場合や、ストレスや体重変化などでホルモンバランスが崩れている場合は、想定しているよりも排卵が遅れている可能性があります。  
 

こうしたケースでは、たとえ「生理予定日」を目安に検査をしても、実際にはhCGが十分に分泌されていないために偽陰性(実際は妊娠しているのに陰性と出る)になってしまうことがあります。  
 
そのため、生理予定日があいまいな場合は、生理予定日からさらに1週間以上あけて検査をすると、より確度の高い結果を得られるでしょう。また、一度検査して陰性となった場合でも、もし生理がこない・体調が変化したなどの不安があれば、日をあらためて再検査をするか、産婦人科を受診して医師に相談することをおすすめします。

 

※1 排卵日(はいらんび)とは?  
卵巣から卵子が放出される日のこと。ふつうは生理周期のおよそ中間(28日周期なら14日前後)に起こるとされています。  


※2 生理周期(せいりしゅうき)とは?  
月経(生理)の開始日から次の月経開始前日までの日数を指します。一般的には25~38日程度が正常範囲といわれていますが、個人差があります。  


※3 生理不順(せいりふじゅん)とは?  
月経が不規則に起こる状態のこと。周期が極端に短かったり長かったり、経血量や期間などが通常とは異なる場合など、さまざまなパターンがあります。

 

早期検査薬と一般検査薬の違いは?

市販の妊娠検査薬には、主に「早期検査薬」と「一般検査薬」の2種類があります。いずれも尿中のhCGを検出する点は同じですが、検出感度(※4)が異なるため、使用できる時期や判定結果の出やすさに差があります。

 

早期検査薬

特徴

通常の検査薬よりも低いhCG濃度(一般的に10mIU/mL前後)でも判定できるよう設計されています。

 

使用時期

生理予定日付近から検査を行える商品が多く、早い段階で妊娠の可能性を確認したい方にとっては便利です。

 

注意点

まだhCGが十分に増加していない場合、偽陰性になりやすい可能性があります。また、ごく初期の自然流産(化学流産)を知ってしまい、不安を感じる方もいるかもしれません。

 

一般検査薬

特徴

25mIU/mL程度のhCG濃度を検出できるタイプが多く、生理予定日から1週間後以降の使用を推奨している商品が一般的です。

 

使用時期

検査のタイミングが少し遅めになる分、はっきりとした結果が得られやすいのがメリットです。

 

注意点

早期検査薬と比べると、検査開始時期は遅れますが、価格が比較的安価で手に入りやすい製品が多い傾向にあります。
 


いずれの検査薬も、使用のタイミングや個人差、検査方法などによって結果が変わる可能性があります。商品に付属する添付文書や説明書には、使用開始目安となる時期が明記されていることがほとんどです。自分の生理周期や体調を考慮して、適切なタイミングで検査を行うようにしましょう。  
 

※4 検出感度(けんしゅつかんど)とは? 
 妊娠検査薬がhCGを感知できる最小の濃度のこと。値が低いほど早い段階でhCGを検出できるため、結果が出る時期も早まる一方、偽陰性が出やすい場合もあるので注意が必要です。

 

妊娠検査薬の正しい使い方

妊娠検査薬は、医療機関でなくても自宅で手軽に妊娠の可能性を確認できる便利なアイテムですが、使い方を誤ると誤判定につながる可能性が高まります。各商品の説明書をしっかり読み、以下のステップに沿って落ち着いて検査を進めましょう。

 

STEP1:使用時期の確認

1.生理予定日からの経過日数を把握する

・生理周期が規則的な場合は、生理予定日をある程度予測しやすいと思います。説明書にある推奨時期(生理予定日の○日後など)を確認しましょう。

 

2.早期検査薬か、一般検査薬かを選ぶ(詳細は前述参照

・早期検査薬:生理予定日前後から使用可能。hCG濃度が低くても検出しやすい。


・一般検査薬:生理予定日から1週間後以降に使うのがベスト。精度が高く出やすい。

 

STEP2:検査準備

1.尿を採取する

 

2.製品ごとの手順に従って検査方法を確認

・尿を容器にとって浸すタイプ、または直接尿をかけるタイプなど、メーカーによって方法が異なります。


・説明書に記載の手順や時間、使用上の注意などを事前によく読みましょう。

 

STEP3:検査実施・判定

1.尿をかける、または浸して指定された時間待つ

・説明書にある秒数や待機時間を厳守しましょう。短すぎても、長すぎても判定が乱れる可能性があります。妊娠検査薬には、判定までの時間が設定されていますが、尿が蒸発すると濃縮され、1度ゴミ箱に捨てた検査薬の判定が、長時間経過して陽性になるというケースも見受けられます。

 

2.判定窓を確認し、時間内に結果を読み取る

・「陽性」:早めに産婦人科など医療機関を受診しましょう。
・「陰性」:生理予定日より早く検査した場合、改めて日をあけて再検査を行うか、生理が遅れている原因がほかにないか、産婦人科で相談してみてもよいでしょう。

 

もし検査結果に疑問を感じたり、不安が続く場合は、産婦人科を受診して血液検査や超音波検査(※5)などで確認してもらうのが確実です。

 

Q:フライング検査ってしていいの?

まだ検査薬が判定できないタイミングでの検査、通称「フライング検査」は、個人差があるのでおすすめはしませんが、どうしても気になるようならやってみても良いと思います。ただし、この時期は超音波検査にはちょっと早いので、後日期間内にもう一度検査しましょう。

 

ちなみに私は、妊娠4週で検査しましたが、陽性になりました!(by 宋)

 

※5 超音波検査(ちょうおんぱけんさ)とは?  
お腹や経腟(けいちつ)にプローブと呼ばれる機器をあて、超音波を使って子宮や卵巣の状態、胎嚢(赤ちゃんの袋)などを確認する検査です。妊娠初期の確定診断や胎児の成長状態を把握するためにも重要とされています。

 

妊娠検査薬はどこで手に入れる?売り場は?

妊娠検査薬は、ドラッグストアや薬局、インターネット通販などで手軽に購入できます。  
 

ドラッグストアで購入する場合の売り場は、店舗によって違いはありますが、衛生用品の近くにあることが多いです。マスクや絆創膏、コンドームなどの避妊具売り場の近くを探してみましょう。  
 

店舗によっては薬剤師が常駐しないところもあるため、もし気になることがあれば薬剤師さんがいる時間帯に購入して相談してみましょう。

 

ドラッグストア・薬局

直接購入し、使用方法などでわからないことがあれば薬剤師さんに聞くことができます。売り場は衛生用品や避妊具などの近くにあることが多いです。

 

インターネット通販

人目が気になる方はネット通販の利用を。妊娠検査薬はAmazonや楽天などでも購入可能です。購入の際は模倣品などに注意を。

 

特に妊娠初期は、ちょっとした体の変化や心の揺れを感じやすい時期かもしれません。妊娠検査薬は手軽で頼りになりますが、すべてを判定してくれるわけではありません。
 


たとえば、検査タイミングや体調によっては偽陰性や偽陽性が起こり得ること、流産や異所性妊娠など、赤ちゃんが育っていない状況でも反応する、ということも理解しておきましょう。  
 

妊娠検査薬は、正しいタイミングと方法で使用すれば、とても高い精度で結果を知ることができますが、その結果をどう受け止めるか、どのように行動するかは。万が一、検査結果に戸惑いがあったり、不安を抱えたりした場合には、ぜひ早めに産婦人科を受診していただきたいです。専門家のアドバイスを受けながらご自身の状況を把握し、安心につなげていただければと思います。  
 

どうぞご自分の心と体を大切にしながら、一歩ずつ前向きに過ごしてくださいね。

 

 

【参考文献】

日本産科婦人科学会 日本産婦人科医会 産婦人科 診療ガイドライン 産科編 2023
日本産婦人科医会HP

厚生労働省 登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和6年4月)

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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