女性 下半身

crumii編集長・宋美玄の炎上ウォッチ #02

小陰唇手術に関する医師の投稿が炎上。ルッキズムやコンプレックス商法の「安易な美の押し付け」への社会的反発が高まっている

「小陰唇に美的ランキングをつけて評価してくるような人と性行為するのは無理」と強い反発の声

今回取り上げるのは、「小陰唇の手術」に関するある医師の投稿がきっかけとなって巻き起こった議論です。
 
投稿の内容は、「小陰唇縮小術を受けた患者さんが好きな人に“こんなにきれいなの初めて見たって言われた”と嬉しそうにしていた」「自己肯定感が上がる」というものでした。これに対して、「気持ち悪い」小陰唇に美的ランキングをつけて評価してくるような人と性行為するのは無理」といった批判が相次ぎ、SNS上でプチ炎上となりました。セックスパートナーの外陰部を美醜で評価すること自体への違和感を多くの人が持っているようでした。

 

医師がコンプレックスを助長するような発信を行うことには慎重であるべき

産婦人科医として診療する中で、外陰部の見た目に関する悩みや質問は珍しくありません。「小陰唇が大きいのは異常ですか?」「色が黒いのが気になる」「パートナーに変と思われないか不安」といった声は、年齢や経験を問わず寄せられます。
 
ただし、何万人もの外陰部を診察してきた医師の視点から見ると、色も形も「十人十色」「大同小異」と言えます。みんな違っていてみんないい。美醜の優劣をつけるようなものではありません。
 
ですが、中には小陰唇が大きくて自転車にまたがると挟まれて痛い、セックスの時に巻き込まれる、左右差が大きくて気になる、あるいはクリトリスが包茎で性感が鈍いといった実際の不都合から手術を希望されるケースもあり、そうした場合は適切な医療介入の対象になります。
 
からだに関する選択には自己決定権があります。顔や身体の他の部位と同様に、外陰部についても本人がどうしたいかを決める権利があるのは当然のことです。手術を受けて満足度が高いのであれば、それを一概に否定するものではありません。

 

女性 鏡 コンプレックス
photo:PIXTA


 
ただし、医師の立場から「美しい外陰部とそうでないものがある」価値観を拡散し、結果的にコンプレックスを助長するような発信を行うことには慎重であるべきだと思います。

 

ルッキズムやコンプレックス商法に対する社会的な感度が高まり、安易な美の押し付けは炎上を招く

似たような構造は「介護脱毛」の話題にも見られます。アンダーヘアが多いと将来介護する人に迷惑がかかる、白髪になる前に脱毛しておくのが“エチケット”という論調が出回っています。たしかに脱毛することで、蒸れやおりものによるかぶれなどが軽減されるという利点もあります。本人が快適さを求めて処理するのであれば、それは自由な選択です。
 
しかし、「人に迷惑をかけるから脱毛しよう」というメッセージが前面に出ると、自己決定ではなく“義務”になってしまいます。本来、自分の体をどうするかに他人への言い訳は必要ないはずです。
 
いまは、ルッキズムやコンプレックス商法に対する社会的な感度が高まり、安易な美の押し付けはたびたび炎上を招く時代なのだ、自分も気をつけてなければいけないなと改めて感じた一件でした。外陰部には美醜や優劣などないということを、産婦人科医として改めて強調したいと思います。

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