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crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #04

厚生労働省が承認を了承した経口避妊薬「スリンダ」とは?「ミニピル」として使われている薬との違いも解説

血栓症のリスクとなるエストロゲン成分を含まない避妊薬「スリンダ」が国内初承認。これまでの「ミニピル」とは何が違う?

 

今回のニュースピックアップは、厚生労働省の専門部が、あすか製薬の経口避妊薬「スリンダ」の承認を了承したという報道です。これまでに日本で承認されている経口避妊薬は、低用量ピルと呼ばれる卵胞ホルモン(エストロゲン)と合成黄体ホルモン(プロゲスチン)の配合剤でしたが、今回承認された「スリンダ」は、ドロスピレノンというプロゲスチンのみの経口避妊薬です。血栓症のリスクとなるエストロゲン成分を含まない避妊薬の承認は国内で初めてとなります。

 

【リスク低い避妊薬了承、厚労省部会 女性の選択肢広げる】(日本経済新聞電子版)

 

プロゲスチンのみの経口避妊薬は俗に「ミニピル」「POP(プロゲスチン オンリー ピル」と言われます。もしかしたら読者の皆さんの中には、「日本でもミニピルはすでにあるのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも、実は、これまでに「ミニピル」として日本で使われてきた薬は「避妊薬」として「国内で承認」されているものはなかったのです。

 

以下に「ミニピル」のような目的で現在国内で処方されることがある薬の代表的なものを挙げました。

 

ノアルテン 

ノルエチステロンというプロゲスチンの製剤。海外では避妊薬として使われていますが、日本では月経困難症や月経不順、不正出血(これらは保険適用)や月経周期の移動(この場合は自費診療)などの効能・効果が認められていますが、避妊薬としては承認されていません。適応外の使用ということで自費診療として処方されることがあります。海外でミニピルとして処方されているものは日本で発売されている錠剤よりも用量が少なめです。

 

ディナゲスト(ジェネリック名はジエノゲスト)

ジエノゲストというプロゲスチンの製剤。子宮内膜症や月経困難症の治療薬として保険適用されています。避妊薬としては承認されておらず、避妊法として使われる例は少ないのではないかと思いますが、毎日服用している間は妊娠する確率は下がるため、現実的に避妊しているような状態になることは知っておくべき薬です。

 

セラゼッタ

デソゲストレルというプロゲスチンの製剤。こちらは国内未承認の海外製の避妊薬で、取り扱っている医療機関は個人輸入により処方されています。日本で承認されている薬ではないので、重大な健康被害が生じた場合でも、その救済を図る公的制度(医薬品副作用被害救済制度)の救済対象とならないことに留意する必要があります。

 

ピル 避妊薬
photo:PIXTA

 

保険適用薬ではなく依然SRHRの課題はあるものの、日本女性の選択肢が増えたことは喜ばしい

 

今回承認された「スリンダ」は、避妊薬として初めて国内で承認された「ミニピル」になります。血栓症のリスクなどの理由でエストロゲンの入った低用量ピルの内服が難しい人も飲めることになるでしょう。

 

まだ費用の情報はありませんが、保険適用薬ではないので、医療機関ごとに値段が異なることになります。また、保険適用の月経困難症治療薬(いわゆる保険ピル)のように一度に3シートまでというような厳格なルールはなく、飲み慣れれば利便性は保険ピルより高くなると思われます。

 

今回は、日本女性の避妊の選択肢が増えた嬉しいニュースでした。費用が全額自己負担というSRHRの課題は依然としてありますが、承認のために尽力してくださった方々に感謝したいと思います。

 

【参考文献】

厚生労働省HP「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

 

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