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【インタビュー】思春期早発症の子どもに親が伝えたいこと。学校生活、性教育、性暴力予防まで
平均的な思春期スタートの時期より、2年ほど早く二次性徴がはじまる「思春期早発症」。命に関わる病気ではないことがほとんどですが、学校生活や月経への対応、周囲の理解、そして子どもの自己肯定感など、日常生活のなかではさまざまな課題があります。
『うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本 思春期早発症の受診・治療・対策』(日東書院本社)では、そうした「生活」の視点にもページを割いています。
同書は、思春期早発症の娘を育てた父親であり、小児科医・精神科医でもある今西洋介さんが監修。インタビュー後篇は、家庭でできること、学校との連携、そして子どもの身体をどう受け止めればいいのかがテーマです。
診断を受けたとき、親はどう受け止める?
――子どもが思春期早発症と診断された……親はどう受け止めればいいのでしょうか?
今西:必要以上に怖がらなくていいですよ、とお伝えしたいですね。私も、長女が「思春期早発症かもしれない」と思ったときには青ざめました。けれど病院で検査を受け、もっとも心配していた脳腫瘍が原因である可能性が除外されたあとは、気持ちを切り替えました。
長女も当初はナイーブになっていましたが、子どもにもわかる言葉で直接話をしてくれる医師に診てもらえたこと、家庭では同性の親である妻が中心になってたくさん話をしたことで、落ち着いて考えられるようになりました。結果、長女の意向を尊重して、治療はしませんでした。

Photo:PIXTA
治療は子どもの意向を尊重して。
――子どもであっても、治療の主体となるお子さんの意向は大切ということですね。
今西:はい、たとえば「治療しないと、大人になっても身長が低いままだよ!」という価値観の押し付けや、下手すると脅しになるような形で治療を促すのは、避けたほうがいいですね。そうではなく、医師からの説明がむずかしかった場合は一緒に調べたり、噛み砕いて説明してあげたり、お子さんが自分で決めるためのサポートをするのが適切です。
それから、お子さんが自分の身体に対してネガティブにならないよう気を配ってほしいと思います。もともと子どもの成長も、人の体格も個人差が大きいものです。しかし、日本では子どもでも“みんな一緒”という同質性を求められることが多く、平均的な成長でないと否定的に受け取られる傾向があると思います。
思春期早発症も“その子なり”の成長ですし、身長を過度に気にするのはルッキズムにつながり、お子さんに「低身長=劣っている、よくないこと」というイメージを植え付ける可能性があります。
生活のなかで準備しておきたいことは?
――子ども同士で身長のことを揶揄(やゆ)されたり、早い発育をからかわれたりといった心配をする親御さんもいます。
今西:人の身体を笑いものにしたり、それを理由にいじめたりというのは、もちろん「する側」に問題があります。それでも、親御さんはじめ周囲の大人から「あなたの身体はおかしくないよ」というメッセージを送られている子と、そうでない子とでは、その受け取り方が大きく変わるでしょう。
一方、思春期早発症のお子さんが学校、社会で暮らしていくうえで気をつけたほうがいいことはあります。お子さんはまだ幼くて自分で気づけないことが多いので、必要に応じて親御さんが先回って教えてあげてください。
――たとえば、どんなことがあるでしょう?
今西:女の子で治療を選択しなかった場合、月経への対処を親子でしておくのは必須です。ナプキンの替え方や捨て方を一緒に練習したり、生理用品をバッグに入れて持ち歩くよう準備したり。初経のあとしばらくは周期が安定しないので、まだ幼い子が突然の月経に対処できるのか、親御さんも心配だと思います。「失敗しないように」よりも、「失敗しても大丈夫だよ」と伝えることのほうが、お子さんの安心につながるでしょう。「ママだって、そんなときあるよ」というメッセージもいいですね。
また、胸が目立つようになってきたら、キッズブラや胸元が二重になった肌着を使う家庭もあります。ここでも、「隠さなければいけない身体だから」ではなく、「毎日を安心して過ごすため」という伝え方をしてほしいと思います。
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学校や先生に共有するときの考え方
――学校には、思春期早発症であることを伝えたほうがいいでしょうか?
今西:思春期早発症の治療では、月に一度、リュープリンというホルモン剤を注射します。学校を遅刻、早退することが増えるという理由で、あらかじめ担任など先生に伝えておく親御さんは多いようですね。ほかにも、月経への対処や、着替え、入浴など配慮が必要な場面を考えて伝えておく、という方もいます。
ただ、誰にどこまで話すかは、お子さんにも共有しておいてください。自分の身体のことが、自分の知らないところで広まっているというのは避けたいことです。
子どもを性暴力から守るために伝えたいこと
――思春期早発症の子どもは、性暴力に遭いやすいのでしょうか?
今西:子どもの性被害の実態が知られるようになってきたので、心配される親御さんは多いですね。性別は関係ありません。少なくない男の子が性被害に遭っている現実があります。思春期早発症だから遭いやすいというエビデンスは現在のところありませんが、年齢より身体が大人びて見えるお子さんのことを、親御さんが心配する気持ちはよくわかります。
子どもを守るために大切なのは、「怖い人に気をつけよう」という教え方ではありません。加害者は、見ず知らずの人より顔見知りが多いということが、最近知られるようになりました。学校や習いごと、親戚など、子どもが信頼している大人が加害者になるケースが、悲しいことに多いのです。
16歳未満の子どもは法律上、性的な同意ができる状態にはありません。もし大人が性的な目的で子どもの身体に触れようとするなら、その時点で相手に問題があります。お子さんには、
・大人が子どもの身体を不必要に触る、子どもに自分の身体を触らせるのは、あってはならないこと
・「親や先生には内緒だよ」と言う大人は信用しなくていいこと
・何かあったら必ず話してほしいこと、そのときに自分たちは否定したり怒ったりしないこと
をくり返し伝えてください。性のことにかぎらず、どんな小さなことでも話せる親子関係を日ごろからつくっておくことが、最大の予防につながります。
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保護者の皆さんへ
――最後に、思春期早発症のお子さんを育てる保護者へ伝えたいことはありますか?
今西:『うちの子、発育が…』では、実際に思春期早発症のお子さんをもつ親御さんへのアンケートを行い、リアルな声を収録しています。それを見ると、どの親御さんも真摯にお子さんの心と身体に向き合ってこられたのだとわかります。
親御さんにできるのは、お子さんが安心して社会へ出ていけるよう橋渡しをすることです。家庭のなかで、身体と成長についての安心感を育み、社会へと送り出す。でも、親御さんが抱えすぎる必要はありません。必要に応じて、医療関係者、学校関係者、ときには地域の専門家などの力を借りてください。そもそも子育ては、家庭だけで完結するものではないです。
思春期は、子どもが大人になって社会へ出ていく準備をする時期です。その終わりは、子どもが自分で自分の身体に向き合うステージのはじまりです。まわりより早く思春期を迎えても、親御さんからあたたかく見守られながら育った子は、その子なりの成長を経て、大人へと成長していくでしょう。
➡思春期早発症の特徴や治療、子どもとの向き合い方を解説した①、インタビュー前篇が掲載された②も併せてご覧ください。
本記事は3回の連載の3回目です。
1.うちの娘が思春期早発症!? 小児科医の父と、助産師の母が真っ先に心配したこととは
2.【インタビュー】早すぎる胸のふくらみ、陰毛、初経…思春期早発症のサインとは? 受診・治療のポイント
3.【インタビュー】思春期早発症の子どもに親が伝えたいこと。学校生活、性教育、性暴力予防まで(この記事)
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『うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本 思春期早発症の受診・治療・対策』
監修:今西洋介(ふらいと先生/小児科医・新生児科医)/日東書院本社/2026年5月発売
思春期早発症は、それ自体が命に関わる病気ではありません。
しかし、思春期早発症のことを「知らない」ばかりに治療の選択肢を失ってしまうと、後々の後悔につながることもあります。
また、まれに脳腫瘍などの重大な原因が潜んでいることもあり、放置はおすすめできません。
ただ、残念なことに、せっかく受診しても「発育は個人差です」「様子を見ましょう」と言われて、治療の機会を失ってしまうこともあるようです。
本書では、お子さんと家族のための「思春期早発症」の基礎的な知識と役立つ情報をお届けします。
お子さんの“早すぎる発育”に「あれ?」と思ったら、ぜひ本書をお読みください。
<取材・監修協力>
今西 洋介
石川県金沢市生まれ。富山大学医学部医学科を卒業後、周産期母子医療センターのNICUで日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医として活躍。2024年には公衆衛生博士号を取得、現在は米国で子どもの医療政策学の研究を行う傍ら、書籍やニュースレター、講演などの情報発信を通じて、正しい育児、医療知識の啓発を行っている。
三浦 ゆえ
編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る小児性被害』(今西洋介著、集英社インターナショナル)、『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うことなかれ』(斉藤章佳・にのみやさをり著、ブックマン社)、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)などの編集協力を担当する。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。















